治療の基礎知識

マウスピース型矯正治療の評価

筒井 万里子 矯正歯科医

2019.07.02

こんにちは、矯正医の筒井です。

矯正治療におけるマウスピースを使用した矯正治療(マウスピース型矯正矯正治療)が、 現在どのように評価されているのかを、その歴史を少し振り返りながら説明していきたいと思います。

アライナー矯正治療の歴史

 

透明のマウスピース(以下アライナーと表記)が矯正治療に初めて導入されたのは1946年にDr Harold Kesling によりトゥースポジショナー(下参考写真)という装置として使われ始めたところにまでさかのぼり、その後テクノロジーの発展とともに 形態がモディファイされて、1998年にFDA(アメリカの厚生労働省にあたるところ)がアラインテクノロジー社のインビザライン(薬機法対象外)を矯正治療の装置として認可したところから始まります。

 

 

透明のアライナーを装置として利用した矯正治療は、従来のワイヤーを表側に貼り付ける装置より、見た目上問題にならず、より快適なものを求める大人の矯正治療での需要の高まりによって、近年増加してきました。

 

 

アライナー矯正治療では、CAD-CAMによって透明の熱成形されたプラスティック製のアライナーが全ての歯の表面を覆い、歯並びの幅広い問題を扱うシステムが組み込まれており、その性能はテクノロジーの進歩によって製品によって大きな違いがあります。

 

アライナー矯正は当初、少しだけの歯の位置のガタつき治すものとして導入され、いくつかのアライナー矯正システムは、今でも歯の移動を制限して治療できる範囲も制限しているものがありますが、現在では複雑な噛み合わせの不正を治療する目的のアライナーも販売されています。

さらには、いくつかのアライナー矯正システムは直接一般の人に販売され、日本では認められていませんが、その中のいくつかは全く矯正歯科医が介入せずに販売されているものもあります。

2015年後半のGoogle調査で“クリアアライナー”と検索した結果では、約27種類の異なる製品が確認されましたが、現在ではさらに多くの企業が歯科治療のデジタル化とともにアライナーの開発、販売に参入してきています。

 

アライナー矯正治のシステムの中には、接着性レジンアタッチメントを歯の表面につけて、アライナー矯正でやり遂げるにはかなり難しく、不可能と思われていた歯の動きもカバーし、治療範囲を拡大するようなシステムもあります。その中でインビザライン( 薬機法対象)という商品は最も複雑で難しい歯の動きをアライナーのみで可能にした製品となっています。

 

現在、アライナー矯正治療で最もメジャーなインビザライン(薬機法対象外) だけで、世界100ヶ国以上の国々で提供され、これまでに600万人(2019年6月現在)を超える方がアライナー矯正治療を受けて来られました。

アライナー矯正治療の評価

 

アライナー矯正治療の分野では、特にアライナーの材料や、装置のデザイン、製造過程に影響するようなテクノロジーの急速な進歩が見られます。この急速な進歩によって、過去の治療に関連するデータを収集するスピードタイム(製品の企画から生産開始までに要する時間)や、出版される研究結果を分析する時間がこれに追いつかず、多種多様なアライナー矯正治療の有効性を科学的に評価するのが難しくなっています。

それゆえ、テストされ、分析され、報告されるアライナー製品は、もはや今、現在使われているアライナー製品と同じではないのです。

 

さらに、アライナー矯正と普通の固定式の矯正治療に関する研究ではその研究方法がはっきりしておらず、正しい方法で比較検討されたものではなく多く欠陥を含んだものになっています。

 

つまりは、この十年ほどで進化の激しいアライナー矯正治療を客観的に正確に評価した証拠は不足しているのが現状ということです。

 

そこで、このアライナー矯正治療自体が不確かなもので、ちゃんと歯を並べることができないのか、噛み合わせをしっかりつくることができないのかというと、そういう事ではなく、昔からあるワイヤー矯正などに比べると確立された治療方法がないということで、ドクターの経験値や技術力に差があり、そのばらつきが大きいのではないかと考えられます。

 

 

アライナー矯正とワイヤー矯正についての違いやそれぞれもメリット&デメリットについては以前のブログにも説明がありますので、そちらをご一読ください。

https://www.esmile.jp/staffblog/2018/06/21/demerit/

 

インンビザライン(薬機法対象外)などのアライナー矯正に使われるアライナーは工場で作られる製品ですが、完全にオーダーメイドで、しかもどのドクターが考えうる最善の治療計画を作成 したとしても、決して同じになることはないものなのです。単純な既製品とは違うので、説明書通りに誰が治療しても同じ結果が得られるというわけにはいかないのです。そして、一人一人の口の中の状態や治療に対する体の反応は異なるので、その時の状況に応じた対処を行えるよう新しく広く深い専門的な知識が必要となってきます。

 

従来からある矯正治療と同等以上の正しい知識と技術の元で、安心して楽しみながら矯正治療を受けられる方が、世界中にどんどん増えていけばいいなと思います。

 

 

 

参考文献:Weir T.  Clear aligners in orthodontic treatment Aust Dent J. 2017 Mar;62 Suppl 1:58-62. doi: 10.1111/adj.12480. Review.

 

筒井

矯正治療は長期間にわたる来院が必要となります。 治療方針などをしっかりと納得し、 自分にあった歯科医院で矯正治療を受けましょう。

 

 

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