
歯並びだけじゃない。笑顔の印象を左右する“横の広がり”

福田浩之 矯正歯科医
2026.03.30
― MSEによる幅径改善とバッカルコリドーの変化 ―
イースマイル国際矯正歯科の福田です。
本稿では、**上顎の幅径不調和(maxillary transverse deficiency)がスマイル審美にどのような影響を与えるのか、またそれに対する治療法の一つであるMaxillary Skeletal Expander(MSE)**について、文献的背景をもとにわかりやすくご説明いたします。
上顎狭窄から始まる下顎歯列の狭窄
上顎の幅がやや狭い状態では、上下顎の横方向のバランスに不調和が生じます。
この不調和に対して、咬み合わせを保つために
下顎臼歯が内側(舌側)に傾くという代償が起こることが知られています [1]。
そのため、一見すると咬み合わせは保たれているように見えることもありますが、
実際には歯列全体としては横幅が不足した状態になっている場合があります。
スマイル審美への影響
歯列の横幅が不足すると、笑ったときに見える歯の範囲も自然と限られてきます。
その結果として、
- スマイルの横幅がやや狭く見える
- 口角と歯の外側との間に隙間ができる
- バッカルコリドー(buccal corridor)が大きくなる
といった変化がみられます。
バッカルコリドーは笑顔の印象に関わる要素の一つであり、
これが大きい場合、やや横の広がりが少ない印象として見えることがあります [2,3]。
上顎拡大とスマイルの変化
上顎を横に広げる治療(RME)に関する研究では、
- スマイルの横幅の増加
- バッカルコリドーの減少
といった変化が報告されています [4]。
これは、歯列の横幅が広がることで
笑ったときに見える歯の範囲が広がるためと考えられています。
MSEの位置付け
MSEは、上顎の幅が不足している症例に対して用いられる上顎拡大装置です。
歯を外側に傾けて広げるのではなく、
上顎の中央にある縫合部に働きかけ、骨格的に横方向の拡大を図る
という特徴があります。
これにより、
- 上顎歯列の横幅の改善
- 下顎臼歯の傾きの改善
- 上下の幅のバランスの調整
が期待されます。
スマイルへの影響
MSEによって横方向の幅が改善されることで、
- 歯列の横幅が広がる
- 下顎の代償的な傾きが改善する
- スマイル時に見える歯の範囲が広がる
といった変化が期待されます。
その結果として、
- スマイルの横幅が広がる
- バッカルコリドーが目立ちにくくなる
といった審美的な変化につながる可能性があります。
RMEの研究結果 [4] とMSEの構造的変化 [5,6] をあわせて考えると、
MSEはスマイルの印象改善にもつながる可能性のある治療法といえます。
まとめ
上顎の幅が狭い状態は、
- 下顎臼歯の舌側への傾斜
- 歯列の横幅
- スマイルの見え方
に影響を与えます。
MSEは、そのような骨格的な幅の不調和に対してアプローチできる治療法の一つであり、
- 歯列の横幅の改善
- スマイルの広がりの改善
- バッカルコリドーの変化
につながる治療と言えます。
笑顔の印象は、歯の並びだけでなく「横の広がり」も大切な要素の一つです。
気になる点がある場合は、お気軽にご相談いただければと思います。
参考文献(Vancouver style)
- Proffit WR, Fields HW, Sarver DM. Contemporary Orthodontics. 5th ed. Mosby; 2013.
- Moore T, Southard KA, Casko JS, Qian F, Southard TE. Buccal corridors and smile esthetics. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2005;127(2):208-13.
- Ioi H, Nakata S, Counts AL. Effects of buccal corridors on smile esthetics. Eur J Orthod. 2009;31(5):530-4.
- da Silva Filho OG, et al. Assessment of smile changes after rapid maxillary expansion. Dental Press J Orthod.
- Cantarella D, et al. Changes in the midpalatal suture after MSE: a CBCT study.
- Moon W, et al. Maxillary skeletal expansion using micro-implants: clinical and radiographic outcomes.