矯正一般

子供の歯列矯正 、いつから始める?

有本博英 矯正歯科医

2020.06.09

             
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子供の矯正治療

子供の歯並びがガタガタで、将来おとなの歯がちゃんと並ぶのか心配。。。

噛み合わせがおかしいけど、まだ子どもの歯だからほうっておいても大丈夫かな?

もし治療をするなら費用や期間はどのくらいかかるのだろう?

子どもの歯並びの相談ってどのタイミングですればいいのだろう?

このような疑問や不安をお持ちの親御さんは少なくありません。

乳歯がまだ残っている7歳ごろから始められる矯正治療は、初期治療(Ⅰ期治療・早期治療)といわれます。

成長期を通じて行われる矯正治療は、初期治療(I期治療) → 経過観察 → 本格治療(II期治療) と、患者さんの状況に応じて必要な時に必要な分だけの治療をステップを踏んで進めていきます。

初期治療の目的は、『大人の歯が並ぶための土台を準備しておくこと』です。

 

 

まず、一番最初に矯正専門医を受診するのはどのタイミングで、どのような検査や治療が必要になってくるのかを説明しましょう。

子供の歯列矯正はいつ始めたらいいのか?

子供の歯列矯正は、早ければ早いほどいいと言うわけではありません。

典型的な早期治療のタイミングは上の前歯4本が生え変わったくらいのタイミング、年齢で言うと6〜8歳くらいです。

アメリカ矯正歯科医会では、どんな子供でも7歳までに矯正歯科医にチェックしてもらうことを推奨しています。まずは小学校に入学したあたりで、矯正歯科医を受診し、レントゲンを撮ってもらうことをお勧めします。(ただし、もしも受け口になっている場合は3歳児健診や、それがわかった段階での早めの矯正専門医への相談をお勧めします。受け口の治療は、様々な方法があり、場合によっては4、5歳からはじめられるものもあるからです。下記反対咬合のところをご覧ください。)

永久歯(大人の歯)の生えかわりが終わっていないこの時期に矯正専門医を受診する目的とは何なのでしょうか。

7歳までの矯正専門医受診でチェックしてもらうこととは?

  • ⒈ 乳歯から永久歯への生え変わりを邪魔する状況はないか?
  • ⒉ これから起こる骨格成長を邪魔する要因はないか?
  • ⒊ 極端な出っ歯による怪我のリスクはないか?
  • ⒋ 悪習癖(指しゃぶり、唇を噛む、舌を挟む etc.)がないか?
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早期治療を行う小学生から中学生にかけての期間は、乳歯から永久歯への交換とともに、骨格が大きく成長変化する時期で、早期治療はこの時期にしかできないとても大事な準備期間です。一見、特に問題がない様に見える場合でも、レントゲンを撮ると上記のような問題がみつかる場合があります。

このような問題に早めに対処しておくことで、スムーズに本格矯正治療に移行して、永久歯に全て生え変わったときに正しい綺麗な歯ならびを得るための準備ができることになります。

 

初期治療のタイミングで何を診ていくのか?

初期治療では以下の4つのポイントをみていきます。
まず、レントゲン撮影を行い、顎の骨の中の状態、おとなの歯の状態、骨格のバランスなどをチェックしていきます。

乳歯から永久歯への生え変わりはスムーズか?

歯の生え変わりは、アゴの骨の中で育ってくる永久歯が生えてくるときに、乳歯の根を吸収しながら歯茎から押しあがってくるので、乳歯が抜けて永久歯におきかわります。

この歯の生え変わりを邪魔するような埋伏歯欠損歯萌出困難歯などがないかどうか、レントゲン写真により、アゴの骨の中に埋まっている永久歯の状態を確認します。

埋伏歯

歯が生える場所が足りなかったり、アゴの骨に埋まっている歯の方向が悪かったりすると、歯がアゴの骨や歯茎に埋まったまま生えてこないことがあります。そのままにしておくと、隣の歯の根を吸収してしまったり、変な方向に生えてきて虫歯になったり、大人になっても生えてこないということが起こる可能性があります。このような問題が起こる前に、顎の骨の幅を広げるなどして歯が生えるためのスペースを作ったり、場合によっては開窓(歯茎を切って埋伏歯に装置を付けて引っ張り出す方法)などの外科的処置が必要なこともあります。
 

欠損歯

いつまでも乳歯が残っている場合、もしかしたら、乳歯の下にあるべき永久歯が欠損している(存在しない)のかもしれません
永久歯がないということは、大人になっても永久歯が生えるべき場所に乳歯が残ったままになります。
乳歯は永久歯より歯の根も短いため、長持ちすることが難しいと言われています。
矯正治療の内容によっては抜歯することもありますが、そのまま残す場合には、むし歯にならないようしっかりとしたメンテナンスを受ける必要があります。また、まれに乳歯の根が骨と癒着することがあり、その場合は抜歯が必要になります。

欠損している部位が残る場合は永久歯が生えそろい、成長が止まった後に将来的にどうするか計画を立てて歯を並べる必要があります。

萌出困難

通常生える時期になっても、何らかの原因で生えてこない歯のことを言います。乳歯から永久歯への交換の後期に多く見られます。乳歯がなかなか抜けずに生えてくることが出来ない、また永久歯の生えるスペースがない、または、手前の歯に引っかり、永久歯がうまく生えてこないなどということがあります。永久歯が変な方向に生えてきたり、途中までしか生えてこない場合などは汚れがたまりやすく歯磨きも難しいため、むし歯のリスクが高くなる可能性があります。このような場合も少し葉の生える方向を変えてやることで、スムーズに歯の交換が行なわれるようにしておくことが必要です。

骨格の成長を邪魔する状態を治す

歯のちょっとした位置付けの問題で、アゴの位置がズレてしまったり、骨格の正常な発育が邪魔されることがあります。

これを放置したままさらに成長が続くと、ズレがどんどん大きくなり、永久歯が生えそろった頃に歯を並べて治療しようとしても、抜歯や外科的処置が必要になったり、ズレが残ったままになるリスクがあります。

こうした状態が見られたら、早期に治療を始め、骨格の成長を邪魔している原因を取り除き、正常な発育ラインに乗せ換えてあげることが大事です。問題が顕著になってから正しい軌道に戻すのは多くの時間と労力を必要とします。

反対咬合

下の歯が上の歯にかぶさり、前方から押さえている状態の噛み合わせのことを反対咬合と言います。

そのまま放置して、この状態で噛みグセがつくと、上アゴと下アゴの成長がズレた状態で間違った方向への成長を続け、将来、骨格的なズレを誘導してしまうことに繋がります。

顕著な反対咬合の場合は、3歳児健診など指摘され、一般の歯医者さんを受診しても、「しばらく様子をみましょう」と言われることがあります。

しかし、3歳の時点で反対咬合だった噛み合わせが自然に治癒する確率は6%との報告があり、

下の前歯6本すべてが上の歯より前に出ている場合は、ほとんど自然治癒することはないと考えてよいでしょう。5歳頃のお子様であれば、ムーシールドやプレオルソという口の周りの筋肉のバランスや舌の位置を治す装置を寝る時だけはめておくだけで、これからの成長に悪い因子をとり除いてあげることができ、反対咬合を治すことができる可能性があります。


交差咬合

上下の奥歯が水平的に横にズレて反対に組み合わさっている噛み合わせのことを交差咬合といい、上下前歯の真ん中のラインもズレている状態が多くの場合に認められます。

反対咬合と同じようにそのまま放置して、この状態で噛みグセがつくと、上アゴと下アゴのズレが成長がズレが骨の成長とともに大きくなり、将来、正面から顔を見たときにアゴがどちらかに歪んでいるのがわかるほどの骨格的なズレに繋がることがあります。

この場合もムーシールドやT4Kという口の周りの筋肉のバランスや舌の位置を治す装置
寝ている時間だけはめておくことで、これからの成長に悪い因子をとり除いてあげることができ、短期間で交差咬合を治すことができる可能性があります。


 

反対咬合や交差咬合の場合は比較的早めの5歳頃までには一度、矯正専門医へ相談するようにしてください。

骨格の土台を整える

骨格の成長が何らかの原因により阻害されていると、上顎の前歯が乳歯から永久歯に生え変わる際にスペースが足りないということが起こります。特に一番最後の方に生えてくる犬歯は、その萌出スペースが足りなくて、大きく頬側にズレて生えてきたりすることがあります。

通常であれば、前歯が乳歯から永久歯に生え変わる時、上あごの骨の幅が広くなって、前歯の十分な交換スペースが作られます。しかし、上あごの幅がしっかり広がっていないと、下あごも上の歯の噛み合わせにより骨格の幅が広がらず、歯の向きが変な方向に変えられて生えてきます。上の前歯の萌出スペースが足りない場合は、上あごの骨の幅を広げてやって、骨格の成長と歯の交換のバランスが取れるように治療をする必要があります。

上の前歯が並ぶスペースがない場合は、上あごを広げて前歯が並ぶスペースを作ってあげることで、下あごも前歯の噛み合わせで自然と広がり、上下の前歯が並ぶスペースを確保することができます。

初期治療の治療期間はおよそ1年から1年半です。

④極端な出っ歯でケガのリスクが高くないか?

下の写真のように極端な出っ歯が認められる場合、口元をぶつけたときなどに歯が折れたり、唇を怪我したりという怪我のリスクが非常に高くなります。上顎前突(出っ歯の噛み合わせ)の場合、正常咬合の人と比べて破折のリスクが50%高くなるという報告もあります。

 

極端な出っ歯が認められる場合は、早期治療を行い、歯の突出を無くしてあげる事も治療の目的となります。
最近では、ワイヤー矯正だけでなく、マウスピース型矯正装置、インビザラインファーストによる子供の早期治療を行う事もあります。子供の上顎前突の治療にマウスピース矯正を行うメリットは、マウスピースを装着することで歯の破折から守りながら、上の前歯の突出を改善し、永久歯の生えるスペースを確保すること治療が同時に進められることです。

ただし、極端な出っ歯ではない場合、骨格の成長方向を邪魔するような状況がなければ、骨の前後的な補正は思春期以降の矯正治療で治すことができるので、あわてて治療を始めて無駄に長い期間矯正装置を使う必要はありません。

その辺りの判断する際にも一度矯正専門医院への受診をお勧めします。

初期治療は必要なのか?

ここまで初期治療の目的や内容についてお話してきましたが、この初期治療は本当に必要なのでしょうか?
初期治療での幅の問題が改善されないまま成長変化で前後的な問題も重なると、治療がとても複雑化します。
簡単に言うと土台が整わないまま歯ならびの問題も重なってきますので、初期治療を適切にしておけば避けられたかもしれない抜歯や外科などの手段が必要になる可能性が出てきます。

初期治療から仕上げの治療へ

初期治療が終わった後は、大人の歯にほとんど生え変わるタイミングですぐに矯正治療を開始できるように、それまでの期間は一緒に見守ることになります。

12~13歳頃に思春期成長で上下顎の前後的な発育が始まり、この時期に骨格の前後的な問題を改善しながら、大人の歯がきれいに並んで生え揃うように治療するのが仕上げ治療(II期治療)になります。
初期治療で土台がしっかりと整えてあれば、全ての歯の向きを揃えて並べる治療は約2年ほどで終わります。

はじめて7歳頃に矯正専門医院を受診してから、矯正治療が終了し、さらにその後も経過観察で通ってもらうとなると、本当に長い期間のお付き合いになります。当院では、小さいお子供から大きくなった患者さんにもずっと楽しんで通院していただける仕組みをたくさん工夫しています。

 

 

 

 

 

 

 

子どもの歯並びを不安に思う親御さんは意外と多くいますが、実際に矯正治療を受けられるお子さんは日本では10−20%ほどとまだまだ少ないのが現状です。(アメリカでは50%以上のお子さんが矯正治療を受けられています。)

必要な時に、必要なことを、必要なだけきっちりと治療しておくことが、これからできてくる大人の綺麗な歯ならびを育てるために大切なことです。
当院では早すぎず遅すぎず、過剰な治療にならないよう、必要最小限の治療でお子さんの成長を見守ります。

7歳ごろに矯正専門医に相談していただければ、将来を見据えた治療の見込みや、最終的な仕上げ治療開始の最適なタイミングをお伝えすることができます。綺麗な歯ならびを育てるお手伝いをするのも、矯正歯科の役割なのです。

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