最新矯正歯科事情

マウスピース矯正は本当に楽?痛みや歯みがきのしやすさから考えてみました

2026.07.23

             
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「マウスピース矯正って、ワイヤー矯正より楽なんですか?」

矯正相談の際に、よくいただくご質問のひとつです。

透明で目立ちにくく、食事や歯みがきのときには取り外せるマウスピース矯正。
なんとなく「ワイヤー矯正より楽そう」というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。

では、実際にはどのような違いがあるのでしょうか。

今回は、マウスピース矯正とワイヤー矯正の痛みや歯みがきのしやすさを比較した、次の3つの論文を参考にしました。

今回参考にした論文

1つ目は、2026年に発表された
“Comparative impact of clear aligners versus fixed orthodontic appliances on periodontal health, pain, and quality of life”
という論文です。

マウスピース矯正とワイヤー矯正について、32件の研究をまとめ、痛み、歯ぐきの状態、生活への影響などを幅広く比較しています。

2つ目は、2024年に発表された
“Comparison of anxiety, pain, and quality of life in individuals with mild or moderate malocclusion between conventional fixed orthodontic treatment versus Invisalign”
という論文です。

60名の患者さんをマウスピース矯正とワイヤー矯正に分け、治療開始後の痛みを0〜10の数字で比較しています。

3つ目は、同じく2024年に発表された
“Orthodontic pain with fixed appliances and clear aligners: A 6-month comparison”
という論文です。

こちらは、装置をつけた直後だけでなく、その後の治療中に痛みがどのように変化するのかを、6か月間追跡した研究です。

少し難しそうなタイトルが並びましたが、3つの論文から見えてきたことは比較的シンプルです。

マウスピース矯正は、特に治療を始めたばかりの時期に痛みが少なく、歯みがきもしやすいため、ワイヤー矯正より楽に感じられやすい傾向がある

ということです。

治療開始1日後の痛みは、5.67と2.70

矯正治療では、歯が動き始めるときに、歯が浮くような感じや、噛んだときの痛みが出ることがあります。

これはマウスピース矯正でもワイヤー矯正でも起こり得ることで、マウスピースだからまったく痛くない、というわけではありません。

ただし、治療開始後の痛みを0〜10で比較した研究では、1日後の平均値が、

  • ワイヤー矯正:5.67

  • マウスピース矯正:2.70

でした。

この研究では、マウスピース矯正の痛みは、ワイヤー矯正より約52%低い値でした。

治療開始から2時間後、6時間後、3日後にも、マウスピース矯正のほうが痛みは少ない結果となっています。

一方で、7日目以降になると、両者の差は小さくなっていました。

そのため、

「マウスピース矯正ならずっと痛くない」

というよりも、

「特に治療を始めたばかりの数日間は、痛みのピークが比較的低い」

と考えるのがよさそうです。

痛みの感じ方には個人差がありますので、数字がそのまま全員に当てはまるわけではありませんが、装置を選ぶ際のひとつの参考にはなると思います。

痛みの“出方”にも違いがあるようです

ワイヤー矯正では、治療中にワイヤーを交換したり、調整したりすることがあります。

6か月間にわたって痛みを調べた研究では、新しいワイヤーを入れたあとに、再び痛みが強くなり、場合によっては数日間続く傾向が報告されました。

マウスピース矯正でも、新しいマウスピースに交換した直後には、

  • 締め付けられる感じ

  • 歯が浮く感じ

  • 噛んだときの違和感

が出ることがあります。

ただ、ワイヤー矯正と比べると、治療中に強い痛みのピークが繰り返し起こりにくい可能性があります。

つまり、単に「痛いか、痛くないか」だけではなく、どのくらいの痛みが、どのようなタイミングで起こるのかにも違いがあるようです。

歯みがきのしやすさも、大きなメリットです

マウスピース矯正が楽に感じられやすいもうひとつの理由が、歯みがきのしやすさです。

ワイヤー矯正では、歯の表面にブラケットやワイヤーがついているため、その周りに食べかすや歯垢がたまりやすくなります。

歯ブラシが届きにくい場所も増えるため、普段より時間をかけて、歯間ブラシなども使いながら丁寧に磨く必要があります。

一方、マウスピース矯正では、食事や歯みがきのときに装置を外すことができます。

歯の表面を直接磨きやすく、フロスも使いやすいため、いつもの歯みがきに近い方法でお手入れを続けることができます。

多くの研究をまとめた2026年の論文でも、マウスピース矯正ではワイヤー矯正と比べて、

  • 歯垢の付着が少ない

  • 歯ぐきの炎症が少ない

  • 歯周ポケットの状態が良好

という傾向が示されました。

つまり、マウスピース矯正の「楽さ」は、痛みだけではありません。

毎日の歯みがきがしやすく、お口の健康を保ちやすいことも、大きなメリットのひとつです。

外せるからといって、何もしなくてよいわけではありません

マウスピース矯正は、装置を外して歯を磨けるという点では、とても有利です。

ただし、

  • 食後に歯を磨かず、そのまま装着する

  • マウスピース自体を十分に洗わない

  • マウスピースをつけたまま甘い飲み物を飲む

といった使い方をすると、虫歯や歯ぐきのトラブルにつながることがあります。

マウスピースは、

「歯みがきしやすい装置」ではありますが、「何もしなくてもお口を清潔に保てる装置」ではありません。

装置を外したときに歯をきちんと磨くこと、マウスピース自体も清潔に管理することが大切です。

イースマイルでは、装置をつける前にTBIと歯みがきテストを行っています

イースマイルでは、矯正治療を、ただ歯並びを整えるためだけの治療とは考えていません。

矯正治療を通して、お口の健康の大切さを知っていただき、治療後もご自身の歯を健康に保っていただきたいと考えています。

そのため、矯正装置をつける前に、

  • TBI(歯みがき指導)

  • 歯みがきテスト

を行い、ご自身でお口の中をきれいに保てる状態を確認してから、矯正治療を始めています。

歯みがきテストでは、

  • どこに磨き残しが出やすいのか

  • 今の磨き方で汚れをきちんと落とせているか

  • どのように磨けば、よりきれいにできるのか

を一緒に確認します。

論文からもわかるように、装置を使用している間の清掃性という点では、マウスピース矯正はとても有利です。

そのメリットをしっかり活かすためにも、治療を始める前に正しい歯みがきの方法を身につけておくことが大切だと考えています。

それでは、マウスピース矯正のほうがよいのでしょうか?

ここまで読むと、「それならマウスピース矯正のほうがいいのでは?」と思われるかもしれません。

たしかに、マウスピース矯正には、

  • 治療初期の痛みが少ない傾向がある

  • 歯みがきやフロスがしやすい

  • 装置が目立ちにくい

といったメリットがあります。

ただし、楽に感じやすいことと、その方の治療に最も合っていることは、必ずしも同じではありません。

マウスピース矯正は、ご自身で装置をつけ外しする治療です。

そのため、

  • 決められた装着時間を守れそうか

  • 食後に歯を磨いて装着し直せるか

  • 外したマウスピースをきちんと管理できるか

  • 毎日の自己管理を無理なく続けられそうか

といった、性格や生活習慣との相性も大切です。

また、

  • 虫歯や歯周病のリスク

  • 現在の歯みがきの状態

  • 歯ぐきや歯を支える骨の状態

  • 抜歯が必要かどうか

  • 歯をどのくらい動かす必要があるか

  • 噛み合わせをどのように整えるか

によっても、適している装置は変わります。

イースマイルでは、マウスピースの快適性や清掃性を大切なメリットとして考えながらも、お一人おひとりのお口の状態、生活背景、必要な歯の動かし方に合わせて、慎重に診断しています。

まとめ

最近の研究では、マウスピース矯正はワイヤー矯正と比べて、

  • 特に治療を始めた数日間の痛みが少ない

  • 強い痛みが繰り返し起こりにくい可能性がある

  • 歯みがきやフロスがしやすい

  • 歯垢や歯ぐきの炎症を抑えやすい

という傾向が示されています。

実際に、ある研究では、治療開始1日後の痛みが0〜10の評価で、

  • ワイヤー矯正:5.67

  • マウスピース矯正:2.70

でした。

ただし、マウスピース矯正がすべての方に適しているわけではありません。

性格や生活習慣、お口の中の状態、そして治療に必要な歯の動かし方によって、適している装置は変わります。

イースマイルでは、装置をつける前にTBIと歯みがきテストを行い、お口の健康を守る準備を整えてから治療を始めています。

そのうえで、マウスピース矯正とワイヤー矯正のそれぞれの特徴を丁寧にお伝えし、患者さんと相談しながら、その方に合った治療方法をご提案しています。


参考文献

  1. Kaur K, Quadri SA, Saini RS, et al.
    Comparative impact of clear aligners versus fixed orthodontic appliances on periodontal health, pain, and quality of life: a systematic review and meta-analysis.
    BDJ Open. 2026;12:60.

  2. Tunca Y, Kaya Y, Tunca M, Keskin S.
    Comparison of anxiety, pain, and quality of life in individuals with mild or moderate malocclusion between conventional fixed orthodontic treatment versus Invisalign: a randomised clinical trial.
    BMC Oral Health. 2024;24:576.

  3. Chan V, Shroff B, Kravitz ND, et al.
    Orthodontic pain with fixed appliances and clear aligners: A 6-month comparison.
    American Journal of Orthodontics and Dentofacial Orthopedics. 2024;166:469–479.

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