ドクターコラム

ヴァナルズダル先生

有本 博英 矯正歯科医

2017.01.04

こんにちは、有本博英です。

新年あけましておめでとうございます。

新年早々ですが、とても尊敬しているロバート=リー=ヴァナルズダル=ジュニア先生が、2017年1月1日、亡くなられました。76歳でした。

ヴァナルズダル先生は、Graber & Vanarsdall の教科書の著者で、ペンシルバニア大学の歯科矯正学のチェアマンであり、矯正歯科医と歯周病医のダブルライセンスを持つ、歯科矯正学を学ぶもので知らない人はいない、まさに矯正界の巨人です。

大学院生の頃からもちろんお名前だけは存じていましたが、初めてお話ししたのはブランソンで行われた、2003年のアングルソサエティでした。

アングルソサエティというのは保証人の紹介がないと入会できない、アメリカの矯正界で最も権威のある学会です。全米の名だたる教授やアメリカ矯正学会雑誌の編集長、高名な臨床家などが会員となっており、日本人会員は40人余りしかいません。その中でもヴァナルズダル先生など別格で、みんなからSlickと尊敬の念を持って呼ばれていました。

ヴァナルズダル先生は、私たちのMOOテクニックの元となったセトリン先生の非抜歯矯正治療の研究をされており、2003年のアングルソサエティで、その効果についての研究発表をされたのです。成長期の単なる非抜歯治療と、リップバンパーを用いた非抜歯治療とでは、下顎の歯槽基底部幅の成長率が約3倍違うということを示した研究です。当時の常識であった、歯槽基底部は矯正治療の影響を受けないとされるLuntströmの歯槽基底論を覆す研究結果に会場は騒然としました。

発表後、私は興奮を抑えきれず、ヴァナルズダル先生にお話しに行きました。『私はセトリン先生の方法の治療を、グリーンフィールド先生に教わってやっています。先生のご発表にとても興奮しています』というようなことを言ったと思います。すると彼は、『おお、君はセトリンの方法でやってるんだね。間違いはないよ。頑張ってくれ給え』と返事してくれました。それ以来セミナーなどでは彼の論文を引用させていただいています。

次に直接お会いしたのは2007年6月にナポリで行われたイタリア非抜歯矯正研究会主催の第1回国際セトリンシンポジウムでした。

Insight of Cetlin Philosophy: Anti-Aging Effect followed by Molar Oriented Strategy というタイトルの私の発表は、のちの鉄板プレゼンの一つとなった『アンチエイジング矯正治療』を初めて公開したものでした。その時、ヴァナルズダル先生は最前列で私の発表を見てくださっていました。そして、講演が終わった後、握手しながら、”Very interesting, I learned a lot.”と言ってくださったのです。

 

第1回国際セトリンシンポジウムにて

私が矯正治療の中心に据えているMOOという考え方は、数ある矯正の考え方の一つですが、非抜歯治療率が多くなるので、その数字を見て批判する先生も多くおられます。そんな中、ヴァナルズダル先生のような大御所に理解と支持をしていただけたのはとても勇気づけられ、ありがたく感じたものでした。

もうお会いできないかと思うと寂しい限りです。先生のような先達に恥じないような仕事をしていきたいと思います。ご冥福をお祈りいたします。

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