ドクターコラム

The Founder (映画 ファウンダー) を見て

有本 博英 矯正歯科医

2017.09.15

こんにちは、有本です。アングルソサエティという学会でシカゴにいってきました。アメリカに行くとやっぱりステーキが美味しいのですが、もう一つ、ハンバーガーもとても美味しい。写真はDoc B’s Fresh Kitchen という、ホテル近くでなにげなく入ったお店のものですが、普通に美味しかった。その帰りの飛行機でマクドナルド創業者、レイクロックの映画 The Founder をみました(以下史実ですがネタバレあり。)。
 
Burger

Doc B’s Fresh Kitchen のハンバーガー

 
 
マクドナルド兄弟が作り出した、ハンバーガー作りの効率化と標準化というシステムを、フランチャイズという仕組みに当てはめて世界に広めた、元セールスマンのレイクロック。でもハンバーガー作りのこだわりの部分と、フランチャイズビジネスの効率性の部分が衝突し、マクドナルド兄弟とレイクロックは一緒にやっていけなくなってしまいます。そしてとうとうレイクロックはマクドナルド兄弟との契約を一方的に破棄し、違約金を払ってこのビジネスを買い取り、世界中に展開したのです。
 
彼は、マクドナルド兄弟のアイデアを盗んだように言われるけれど、全く違うビジネスモデルだから、そういう批判は的外れです。レイにとっては別にハンバーガーじゃなくても何でもよかったのです。
 
ビジネス的に見れば、世界中に広がるフランチャイズ帝国を作り上げたということなのでしょうが、ハンバーガーという商品のことを考えると、彼らの功績は、ハンバーガーを世界中に広めた、ということでしょう。でもそれは同時に、本当はもっと美味しいアメリカの国民食たるハンバーガーを、大して美味しくないただのファストフードとして世界中で貶めた罪を負っているとおもいます。ビジネスが向かうエネルギーの先は、時に元々あった価値を、もっと良くなったかもしれない価値を破壊してしまうのです。
 
さて、ここで考えたのは、すべての職人技がこのようにファストフード化する方向に向かうのか?ということです。ファストフード化させることのできる条件は一つ。『誰もが同じクオリティで簡単に作ることができる商品と仕組み』ということです。
 
矯正歯科治療はどうでしょうか?近年急速なデジタル化とアライナーの進歩により、大きな変革期にあるのは間違いありません。特にiTero Elementなどの口腔内スキャナーがあればそのデータを送るだけでインビザラインの設計図であるクリンチェックができて来ます。そういう意味では『簡単に作る』ことができる仕組みであるのは確かです。
 
しかし、治療クオリティは各ドクターによって全く違う。クリンチェックには治療ゴールと治療ステップとアタッチメントデザインを組み込む必要がありますが、それは個々のドクターによって全く違うのです。矯正治療についてきちんと勉強していないドクターの中には、送り返されて来たクリンチェックをそのまま承認するようなドクターがいると聞きますが、このクリンチェックはドクターではない技師さんが作ったものであり、そんなものではちゃんと治りません。今後AIがもっと組み込まれるようになるにせよ、矯正治療のクオリティはここのドクターに依存するという部分は変わらないでしょう。
 
インビザラインをあまりされていない矯正歯科医の中には、これをファストフード矯正治療と呼ぶ人もいるようですが、矯正治療に関してはそのような『心配』はいらないと思います。ただし、データが3次元デジタルになり、直接患者さんの口の中でする作業が減る分、矯正歯科医の働き方は大いに変わってくる可能性はありますね。映画を見て、そんなことを思いました。ではでは。
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