ドクターコラム

医者が医者を批判 するとき: 前医と後医

有本 博英 矯正歯科医

2016.06.19

こんにちは、有本博英です。

今日はイースマイルは日曜診療ですが、家族は甲子園に阪神xSB戦を見に行くらしい。まぁまぁ雨だけどやるのかな?で、写真は阪神甲子園駅のエレベーターのボタン。1階2階が1球2球になってる。

で、全然関係ないですが、医者も1人目2人目と、最初の医者にかかったあとに、その医者からの紹介や引越し、あるいはセカンドオピニオンなど複数の医者にかかる場合があります。そういう場合、患者さんは、後の医者の方を名医と認識する傾向があるという記事がありました。

その理由として、

  1. 後医のほうが前医からの情報を持っている。
  2. そもそも治療が進んでいてすぐに治る状態のことがある。
  3. 後医だけが前医を批判できる立場にある。

の3つがこの記事では上げられており、医者を判断するときには注意しましょうという内容になっています。

でも1や2が理由で、患者さんが後医を名医だと思ったとしても、それはどうでもいいことだと思います。患者さんの病気がちゃんと治るなら、どちらが名医と思われようががいいじゃないですか。

ずいぶん昔ですが、最後まで診断に迷った難しいケースがあります。様々な論文を調べ、知り合いのドクターに相談し、治療方針を考えて患者さんとご両親にお伝えし、患者さんはそれで治療したいと了承されました。しかしその後私は、実際に治療を開始するまでの間も考え続け、お伝えした治療方針とは別のやり方の方が圧倒的に効果的だ!という方法が思い浮かんだのです。そこでもう一度患者さんとご両親に来ていただき、その方法について説明させていただきました。すると、ご両親は怒ってしまわれた。”先生はこの間こちらの方法がいいと私たちに説明したではないか。私たちもその方法についてネットで調べて、納得して、やってもらおうと思っていたのに今日はそれとは違うことを言う。もう信用できません。別の先生を探します。”

この時点で私は完全に患者さんからの信頼を失ってしまいました。私も人間ですのでそれなりに凹みますが、それは患者さんにとってはどうでもいいことです。問題は、患者さんがちゃんと治ること。たとえ私に治療を担当させてもらえなくてもその患者さんがちゃんと治りさえすればよい。私はこれまでに調べた関連論文や資料と治療についての考え方を記したものを患者さんに渡し、次のドクター(後医)に渡すようお願いしました。もし何か問い合わせたいことがあるならいつでも連絡をくださいともお伝えしました。しかしその後連絡はありません。患者さんはおそらく後医の方が信頼できると考えて前医たる私の意見など聞いても仕方がないと思われたのかもしれません。

この場合は上記1にあたります。後医の先生は私の調べた資料を見れるわけですね。

2の場合はよくあります。引っ越しなどで転医してこられた場合、治療の続きをさせていただくわけですが、思ったより早く治ったと感謝していただけるような時。前の先生がちゃんとされていたからスムーズに治療が進みましたね!とお伝えするようにしています。

問題は3の場合です。

確かに後医は前医を批判できる立場にありますが、倫理的にそのような批判をしてはいけない。特に矯正治療の場合は、同じ症状であっても様々な考え方やテクニックがあるので、治療方針は担当するドクターによって異なることも多いのです。しかしそのような場合に、前医の方法を非難するようなことはもちろんしてはいけません。

ところが、困ったことに、明らかに間違い、あるいは稚拙な治療をされている、ということが、しばしばあるのです。前医の批判をすべからず、という医師同士の規定を守るならば、たとえその治療が間違っていても間違っているとは言ってはいけないということです。でもこれは患者さんの利益につながるでしょうか?

もし前医のしたことを伝えたら、その患者さんは医者不信に陥るかもしれません。ひいては日本の医療全体への不審の輪が広がる可能性もあるでしょう。また、当然前医はその患者さんからの信頼を失うでしょう。そして私は前医から恨まれることになるかもしれません。その前医からの紹介がなくなるかもしれないし、前医が学会の権威で干されるなんてことになるかもしれない(医者の世界は狭いですからね)。しかしだからと言って、これを伝えずに隠蔽するようなことは、『患者さんへの貢献』ということを第一義に考えるならば、私はやはりできません。

例えば自費でセラミックのクラウンをついこの間入れてもらった、というのに明らかに合っていなくて隙間が空いていたり、抜歯をしてきたというのにレントゲンをみると根っこが取り残されていたり、虫歯治療の詰め物が隣の歯とくっついているとか、八重歯の矯正治療で虫歯でもないのに犬歯を抜くというような診断をされていた、というようなことが実際にありました。このように明らかにおかしいと思える場合は、慎重にではありますが、お伝えしないといけないと思います。

医者は患者さんを守るからこそ人の体をさわるライセンスを与えられています。患者さんの利益と、医者の利益が拮抗する場合、僕は迷わず患者さんの利益を優先します。個々の患者さんの利益を。

ですので3の場合、記事中には

顧客である患者に対して、同僚である医師の悪口を言うような医師は信頼できません。医師に限らず、他者をさげすむことで、自分を優位に見せようとする人には近づかないほうがよいのと同じことです。

とありますが、それが医者が自分を守るためのものなのか、患者さんを守るためのものなのか、患者さんとしてはじっくり見極めていただきたいものです。

実際、たまに他院のHPをみると、特に専門医でない医院の矯正症例写真など、目を覆うばかりのものが本当に多い。自分で無茶苦茶なことをしていると知ってか知らずか、専門医なら絶対表に出せないような症例を、説得力のある文章とともに堂々と出されています。これを素人の患者さんに見極めろという方が無理なのかもしれません。

歯学部を卒業し、歯科医師免許さえ持っていれば、矯正治療をすることが法律的に誰でもできますが、歯学部を卒業するだけでは矯正臨床はほとんど習いませんから、このようなとんでもない症例集を堂々と出しても恥ずかしいとさえ思っていないのでしょう。プチ矯正とか部分矯正など、専門医が決してしないのは、それなりの理由があるのです。

いたずらに他院の批判をするようなことはもちろんいたしません。私だって間違っている可能性があると常に肝に命じています。それでも患者さんの利益を第一にという覚悟で患者さんを診させていただいています。

そんなストレートなコンサルテーションをご希望の方はこちらまで。ではでは

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